2025年7月26日(土) 及び27日(日)に開催された Mrs. GREEN APPLE 横浜山下ふ頭特設会場 野外ライブにおける騒音伝搬に関する検証報告について
2026年6月2日
株式会社ソーゴー東京
騒音伝搬に関する検証報告書
― Mrs. GREEN APPLE 横浜山下ふ頭特設会場 野外ライブ ―
本報告書は、横浜山下ふ頭特設会場において実施された当該野外音楽ライブに関し、音響に起因する騒音伝搬について、専門家の知見を踏まえて検証した結果を整理し、ご報告することを目的とするものです。
なお、本報告書はイベント全体の運営全般に関する原因究明を行うものではなく、音響条件および周辺環境条件に着目した技術的な検証内容をまとめたものです。
【実施概要】
山下ふ頭内の特設会場(以下、「会場」)にて、アーティスト「Mrs. GREEN APPLE(以下、(アーティスト)」のデビュー10周年を記念した野外ライブ(以下、(ライブ)」を実施しました。
□ライブ名
MGA MAGICAL 10 YEARS ANNIVERSARY LIVE 〜FJORD〜
□会場
山下ふ頭特設会場 / 神奈川県横浜市中区山下町
□実施日時
以下の2日間にわたり実施しました。
2025年7月26日(土) 開場/15時30分 開演/18時00分 閉演/21時00分
2025年7月27日(日) 開場/15時30分 開演/18時00分 閉演/21時00分
※山下公園と山下ふ頭の隣接する山下公園口ゲートは両日とも9時00分よりオープンしました。
閉演まで、山下公園口ゲートから入場口前の間のスペースで、アーティストグッズ物販ブース、協賛社ブース、横浜市PRブース、GREEN×EXPO2027 PR動画の放映、救護室の運用などを実施しました。
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【発生事象】
ライブ実施の2日間において、ライブ中およびライブ終了後、主に近隣住民の方々や、横浜市鶴見区、横浜市神奈川区、川崎市、東京都大田区方面にお住まいの方々より、ライブの音が大きいといった苦情が、各地域管轄警察署に多数寄せられました。
□ライブ実施における音響設計について
周辺市街地の生活環境に影響が出ないよう配慮しつつ、客席前方と後方のお客様との間で、感じられる音圧に大きな差が発生しないように設計しました。
□音漏れに対する事前対策について
・低音域のスピーカー:指向性を持たせ、特定方向に音を集中させることで、その方向以外に音が届きにくくなるよう設計しました。
・高音域のスピーカー:客席エリア外にエネルギーが集まらないよう調整しました。
・各アレイの音量を下げるために細かくDelayスピーカーを設置し、エネルギーの集中を防ぐ構成としました。
※Delayスピーカー:ライブ会場などで、メインスピーカーからの音と同時、または少し遅れて、後方の客席に音を届けるためのスピーカーです。
※アレイ:スピーカーの配置、配列を含めたスピーカーシステムを指します。
□騒音問題発生直後に考察された事象発生の原因
周辺住民の方々への配慮を最優先に、ステージおよび場内のスピーカーを全て客席方向および下方に向けて設置していました。
しかしながら、当日の風の影響により、音が海側(横浜市鶴見区、横浜市神奈川区、川崎市、東京都大田区方面)へ流れ、加えて伝播した音の減衰が緩やかであったことから、広範囲にライブ音が到達した可能性があると推察しました。
特に、減衰しにくい低音(ベースやドラム)の振動が広範囲に伝わった可能性があると推察しました。
※ライブ当日の風速および風向きについて
7月26日(土)公演時間18時-21時
▷ステージ風速計での計測値(会場設置の風速計データ)
平均風速値:3.1(m/s) 最大瞬間風速値:9.7(m/s) 風向き:南〜南西〜南南西
▷上空の計測値(気象庁データ)
平均風速値:4.6(m/s) 最大瞬間風速値:12.5(m/s) 風向き:南〜南西〜南南西
7月27日(日)公演時間18時-21時
▷ステージ風速計での計測値(会場設置の風速計データ)
平均風速値:3.2(m/s) 最大瞬間風速値:7.2(m/s) 風向き:南〜南西〜南南西
▷上空の計測値(気象庁データ)
平均風速値:4.4(m/s) 最大瞬間風速値:11.2(m/s) 風向き:南〜南西〜南南西
参考)2024年7月20日(土)~8月4日(日)の上空の計測値(気象庁データ)
平均風速値:2.8(m/s) 最大瞬間風速値:9.5(m/s)
□7月26日 本番1日目を終えてからの翌日公演の対応について
・MAINステージ側および各Delay Towerスピーカー群のうち、遠方向きキャビネットはMUTE(無効化)にしました。
※キャビネット:スピーカーを収める箱、筐体を指します。
・ステージ前方の床置きスピーカーの音圧を見直し、変更しました。
・当初定めた本ライブの音圧ルールを見直し、変更しました。
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【検証内容および結果】
大阪工業大学 機械工学科 吉田準史教授※1の協力のもと、上記の音響条件および環境条件における解析シミュレーション※2を実施しました。
■検証内容
①FOH(メインステージ前)および会場後方(客席後方)におけるライブ当日の音圧データ実測値を用いて、解析シミュレーションを実施しました。
②会場から海側(横浜市鶴見区、横浜市神奈川区、川崎市、東京都大田区方面)への方向別距離減衰および到達した騒音レベルを分析しました。
■検証結果
分析条件: FOHで100dB、会場後方で98dBの騒音レベル
対象エリア: 会場~横浜市鶴見区、横浜市神奈川区、川崎市、東京都大田区周辺
分析条件: ⑴FOHで100dB、会場後方で98dBとなるメインスピーカーおよびDelayスピーカー出力
⑵ASJ CN-Model 2007 による予測
⑶地形の高低差を考慮
分析結果: 本会場 ~横浜市神奈川区入江一丁目付近(直線距離約5km): 65~70dB
~横浜市鶴見区東寺尾三丁目付近(直線距離約6km): 65~70dB
~川崎市川崎区境町一丁目付近(直線距離約10km): 60~65dB
~東京都大田区南六郷一丁目付近(直線距離約12km): 55~60dB
~東京都大田区大森西四丁目付近(直線距離約15km): 50~55dB
分析総括:
・無風状態であっても、会場からの直線距離約12km以内のエリアでは、メインスピーカーおよびDelayスピーカーの出力の影響により、環境基準を超過していた可能性があることが示されました。
・風の影響によって、さらに伝達音のレベルが大きくなっていた可能性もあると考察されます。
■専門家からの助言および今後の検討事項
・今回の分析(シミュレーション)はあくまで予測であり、木々やビルなどの影響も考慮されていないことから、最適な音響出力を検討するためには、当該会場を出力源とした会場内外での音圧測定を実施し、各方向の実際の距離減衰を把握する必要があります。
・当該会場は埠頭用地ということで、野外音楽ライブ実施に関する情報の蓄積が多くないと聞いているため、今後、音楽ライブを開催する場合には、今回の遠距離伝播の事案を踏まえた慎重な対応が求められます。たとえば以下のような対応が考えられます。
▸事前の音響シミュレーションを充実・徹底し、適切な音圧レベルの設定すること
▸リハーサルなどの機会を活用し、周辺地域において事前の実地確認(音圧レベル測定等)を行うこと
そのうえで、音楽ライブ本番も含めた当該会場におけるデータを蓄積し、分析を重ねることにより、当該会場の特性に即した、周辺地域と会場内の双方に調和の取れた音響出力ルールの設定していくことが望まれます。
そのためには、会場の音がどのように外部に伝わるのかを継続的に調査または予測し、適切な会場内音量を検討していく必要があります。
会場内音量(音圧)設定の考え方 
音量(音圧)と許容範囲 
また調査方法として、評価点における音量に音楽ライブ以外の音(暗騒音)の影響が多く含まれる場合には、評価点までの経由地における音量(音圧)も同時に計測し、距離と音量の変化を把握したうえで、その関係から、音源から評価点までの音の伝わり方を推定していく方法も有効であるとの助言を受けました。

上記の評価・分析に加え、以下のような対応も併せて実施することで、音楽文化の発展と生活環境の保全を両立できる最適解を見出していくことが重要であるとのご意見をいただきました。
▸ライブ当日の周辺地域でのモニタリングと、その結果に応じた迅速な音圧レベルの調整
▸開催内容(規模等)に応じた丁寧な事前周知および適切な周知範囲の設定
▸分かりやすく、つながりやすい専用問合せ窓口の設置(ライブ当日および開催日前後)
▸開催状況(トラブル等)を迅速にお知らせするホームページの開設 等
【検証結果を踏まえた受け止め】
今回の分析の結果、無風状態でも遠方まで大きな音が伝播していた可能性が高いことが示されました。
特に、Delayスピーカーを多数使用したセッティングにより、伝達音のレベルがさらに大きくなっていた可能性があるとの分析結果でした。
また、当日の気象条件(風)の影響により、伝達音のレベルがさらに大きくなっていた可能性もあり、加えて重低音による影響も大きかったものと受け止めています。
皆様には、多大なるご迷惑をおかけしましたことを心より深くお詫び申し上げます。
今回の事態および検証結果を真摯に受け止め、再発防止に努めてまいります。
あわせて、地域の皆様にご理解とご協力をいただけるような音楽ライブイベントの開催に向け、より適切な運営に尽力してまいります。
【参考資料】
※1.大阪工業大学
機械工学科 吉田準史教授 について
大学内の振動・音響研究室にて、主に自動車などの乗り物や家電機器のような製品を対象とした振動・音響分析や評価手法、低減手法について研究をされています。また、市町村の環境影響評価委員(騒音・振動担当)も歴任され、地域の静穏な住環境の維持、管理にも従事されています。
近年は野外音楽イベントを対象に、アーティストや聴衆が楽曲を楽しめ、住民の居住環境も守る「適切な音」を探ることを目的として「オトヂカラプロジェクト」を発足されています。
本プロジェクトでは音楽ライブ会場周りの環境やスピーカーの特性、楽曲の周波数特性などによる会場内外での音の伝わり方を分析・予測し、音楽ライブ会場内での適切な音響レベルの上限値を見いだすことで、音楽文化の発展と静穏な居住環境の両立を目指されています。
※2. 距離減衰シミュレーションについて
音源から各地域までの音響伝搬状況をASJ CN-Model 2007を使用して予測しました。
ASJ CN-Model 2007は、日本音響学会(ASJ)が2007年に策定した、現場から発生する騒音の伝搬およびレベルを予測する計算モデルです。
この手法では、騒音を点音源(点状の騒音源)として扱い、音響パワーレベルを基に予測を行います。
なお、周辺地域の木々やビルなど様々な周辺環境の影響についても、条件設定により解析に反映することは可能です。
しかし、これらの要素を反映するためには、周辺環境に関する詳細な条件情報の収集・精査および入力作業が必要となり、解析条件の設定が非常に複雑になります。
また、これらの要素を加味した場合でも予測精度の向上は限定的であると考えられることから、本シミュレーションでは計算条件には含めていません。